ケインズ型45度線分析で理解する国民所得の決定|中小企業診断士試験対策

中小企業診断士試験の「経済学・経済政策」では、マクロ経済の基礎理解が問われます。特に重要なのが「国民所得の決定メカニズム」。

なかでもケインズ型の45度線分析は頻出ポイントで、しっかり理解しておきたいテーマです。

この記事では、ケインズ経済学の考え方から始めて、「消費関数」「投資」「乗数効果」を通じて、国民所得の決まり方を図解イメージとともに解説していきます。

ケインズ経済学とは?

ケインズ経済学では「市場は放っておくと失業を生むことがある」という立場を取ります。古典派経済学が「供給が需要を生む」として自動調整を信じていたのに対し、ケインズ有効需要(消費+投資+政府支出など)こそが国民所得を決定すると主張しました。

つまり、「需要が足りなければ経済は縮小し、失業が増える」という考え方です。

ケインズ型45度線分析とは?

ケインズ型45度線 引用:wikipedia

縦軸:総支出(需要)
横軸:国民所得(供給)

「45度線」は「総支出 = 国民所得」の線です。この線と総需要(消費+投資)の曲線が交わる点が、均衡国民所得を表します。

この分析の目的は、「国民所得がどこで安定するか」を視覚的に理解することです。

消費関数と限界消費性向

国民の消費は、所得に応じて決まるとされます。その代表的な式は

C = C₀ + cY

  • C:総消費
  • C₀:基礎消費(所得がゼロでも行われる最低限の消費)
  • c:限界消費性向(所得が1増えたときに消費がどれだけ増えるか)
  • Y:所得

例えば、限界消費性向cが0.8なら、所得が1万円増えると8千円が消費に回ることになります。

投資は外生的に一定と仮定

ケインズ型の簡易モデルでは、投資は利子率に関係なく「外生的に一定」と仮定します。これにより総需要関数は次のようになります。

AE = C + I = C₀ + cY + I

AEは総支出(総需要)を意味します。Iは投資額です。CとIの合計が国民の購買力です。

国民所得の決定と均衡条件

国民所得Yは、総支出(AE)と一致する水準で決定されます。

Y = C + I

上の式を代入すると、

Y = C₀ + cY + I

これをYについて解くと、

Y - cY = C₀ + I
Y(1 - c) = C₀ + I
Y = (C₀ + I) / (1 - c)

これが均衡国民所得の式です。

乗数効果とは?

乗数とは、投資や政府支出の増加が、何倍にもなって所得を押し上げる効果のことです。上の式に含まれる 1 / (1 - c)がまさに乗数です。

乗数の公式

乗数 k = 1 / (1 - c)

たとえば、限界消費性向c = 0.8なら、

k = 1 / (1 - 0.8) = 5

つまり、投資が1増えたら、最終的には国民所得5増えるということになります。

総需要曲線のシフトと均衡所得の変化

もし投資が増えれば、総需要曲線(AE)が上方にシフトします。これにより45度線との交点が右に移動し、均衡国民所得が上昇します。

反対に、消費が冷え込んだり投資が減ると、総需要曲線が下方にシフトし、均衡所得も減少します。

よくある試験問題のパターン

中小企業診断士試験では、以下のような問題がよく出ます。

  • 限界消費性向が0.75のときの乗数は?
    → 1 / (1 - 0.75) = 4
  • 投資が20増加、c = 0.8のとき、国民所得はいくら増える?
    → 乗数 = 5、よって20 × 5 = 100の所得増
  • 消費関数C = 50 + 0.6Y、投資I = 100のとき、均衡所得は?
    → Y = (50 + 100) / (1 - 0.6) = 150 / 0.4 = 375

まとめ|図を頭に描きながら、公式を使いこなそう

  • 国民所得有効需要=供給」の交点で決まる
  • 45度線分析を使えば視覚的に理解できる
  • 消費関数・投資・乗数はセットで覚える
  • 計算問題では「公式にあてはめる力」がカギ

この記事を通じて、「国民所得の決定」がしっかり頭に入ったら、他のマクロ経済分野(財市場、貨幣市場、IS-LM分析など)にもスムーズに進めます。