ケインズ型45度線分析で理解する国民所得の決定|中小企業診断士試験対策
中小企業診断士試験の「経済学・経済政策」では、マクロ経済の基礎理解が問われます。特に重要なのが「国民所得の決定メカニズム」。
なかでもケインズ型の45度線分析は頻出ポイントで、しっかり理解しておきたいテーマです。
この記事では、ケインズ経済学の考え方から始めて、「消費関数」「投資」「乗数効果」を通じて、国民所得の決まり方を図解イメージとともに解説していきます。
ケインズ経済学とは?
ケインズ経済学では「市場は放っておくと失業を生むことがある」という立場を取ります。古典派経済学が「供給が需要を生む」として自動調整を信じていたのに対し、ケインズは有効需要(消費+投資+政府支出など)こそが国民所得を決定すると主張しました。
つまり、「需要が足りなければ経済は縮小し、失業が増える」という考え方です。
ケインズ型45度線分析とは?

縦軸:総支出(需要)
横軸:国民所得(供給)
「45度線」は「総支出 = 国民所得」の線です。この線と総需要(消費+投資)の曲線が交わる点が、均衡国民所得を表します。
この分析の目的は、「国民所得がどこで安定するか」を視覚的に理解することです。
消費関数と限界消費性向
国民の消費は、所得に応じて決まるとされます。その代表的な式は
C = C₀ + cY
- C:総消費
- C₀:基礎消費(所得がゼロでも行われる最低限の消費)
- c:限界消費性向(所得が1増えたときに消費がどれだけ増えるか)
- Y:所得
例えば、限界消費性向cが0.8なら、所得が1万円増えると8千円が消費に回ることになります。
投資は外生的に一定と仮定
ケインズ型の簡易モデルでは、投資は利子率に関係なく「外生的に一定」と仮定します。これにより総需要関数は次のようになります。
AE = C + I = C₀ + cY + I
AEは総支出(総需要)を意味します。Iは投資額です。CとIの合計が国民の購買力です。
国民所得の決定と均衡条件
国民所得Yは、総支出(AE)と一致する水準で決定されます。
Y = C + I
上の式を代入すると、
Y = C₀ + cY + I
これをYについて解くと、
Y - cY = C₀ + I
Y(1 - c) = C₀ + I
Y = (C₀ + I) / (1 - c)
これが均衡国民所得の式です。
乗数効果とは?
乗数とは、投資や政府支出の増加が、何倍にもなって所得を押し上げる効果のことです。上の式に含まれる 1 / (1 - c)がまさに乗数です。
乗数の公式
乗数 k = 1 / (1 - c)
たとえば、限界消費性向c = 0.8なら、
k = 1 / (1 - 0.8) = 5
つまり、投資が1増えたら、最終的には国民所得が5増えるということになります。
総需要曲線のシフトと均衡所得の変化
もし投資が増えれば、総需要曲線(AE)が上方にシフトします。これにより45度線との交点が右に移動し、均衡国民所得が上昇します。
反対に、消費が冷え込んだり投資が減ると、総需要曲線が下方にシフトし、均衡所得も減少します。
よくある試験問題のパターン
中小企業診断士試験では、以下のような問題がよく出ます。
- 限界消費性向が0.75のときの乗数は?
→ 1 / (1 - 0.75) = 4 - 投資が20増加、c = 0.8のとき、国民所得はいくら増える?
→ 乗数 = 5、よって20 × 5 = 100の所得増 - 消費関数C = 50 + 0.6Y、投資I = 100のとき、均衡所得は?
→ Y = (50 + 100) / (1 - 0.6) = 150 / 0.4 = 375
まとめ|図を頭に描きながら、公式を使いこなそう
この記事を通じて、「国民所得の決定」がしっかり頭に入ったら、他のマクロ経済分野(財市場、貨幣市場、IS-LM分析など)にもスムーズに進めます。